母親とのコミュニケーションのあり方は、子どもの心理的発達に影響を及ぼすということは多くの研究で示されていますが、西オーストラリア大学で最近行われた研究では、母親との会話と子どもの視点取得の発達の関係を明らかにしました。
Mother's talk helps children see other viewpoints.
この研究では、120人の4-6才の子どもを対象に2年間の縦断的研究を行いました。そして、言語発達に遅れのない子どもの場合、
@母親との会話の頻度が高いこと
A母親が他者の考えや感情について詳しく教えていること
の2点が、子どもの他者の視点で考える能力に関連していることが示されました。
他者の視点から物事を考える能力は、他者との円滑なコミュニケーションを促進するだけでなく、物事を俯瞰的に捉え問題を解決する能力のベースとなる重要な能力です。
この研究の興味深い点は、母親とのコミュニケーションのあり方との関連を見ている点です。
特に今回の研究では、「他者の考えや感情を詳しく子どもに教える」ということは比較的取り入れやすいものであり、育児や家庭でのしつけ・教育などにも応用しやすいのではないかと思います。
2011年12月30日
母親との会話は子どもの視点取得の発達に影響する
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| 心理学の研究
2011年10月25日
左脳が活発な子は言語の発達が良好
金沢大学の三辺義雄教授、菊池充特任准教授らによる「ほくりく健康創造クラスター」のグループが、幼児用に開発した脳磁図計(MEG)を使って、脳の左半球と言語発達の関連を明らかにしたことがニュースになっています。
左脳活発な子 より言語発達 発達障害早期診断に道
オリジナル論文はThe journal of neuroscienceに掲載されています。
Lateralized Theta Wave Connectivity and Language Performance in 2 to 5 Year-Old Children
脳の左半球と言語発達の関連は、成人に関しては随分前から指摘されている事実です。
しかし、意外なことに就学前の幼児についての実証研究は今回のこの研究が世界初とのこと。
というのも、脳の活動を測定するMEGなどの装置では一定時間じっとしていなければ正確なデータが導きだせないため、長時間じっとしていられない幼児に対して利用することがこれまで難しかったからだそうです。
今回開発された幼児用MEGでは、子どもの好きなDVDを見れるなどの工夫をし、子どもが装置の中でじっとしていられるようにしてあります。この装置を使うと、わずか5分で安全に脳の活動を測定することができるそうです。
この研究は、幼児における左脳と言語と関連を明らかにしたという実験結果以上に、この幼児の脳活動を測定するためのMEGの開発が評価されているようですね。例えば、子ども脳障害の研究や、発達障害の早期診断などへの応用に期待が寄せられています。
こういった研究を見ていると、本当に心理学(および心理学関連領域)の研究というのは、テクノロジーの進歩の恩恵を受けて進歩していることを実感します。
今後、乳幼児の脳研究も急速に進歩しそうですね。こういった研究の成果が子どもたちのQOLに役立つことを期待したいです(^^)
左脳活発な子 より言語発達 発達障害早期診断に道
オリジナル論文はThe journal of neuroscienceに掲載されています。
Lateralized Theta Wave Connectivity and Language Performance in 2 to 5 Year-Old Children
脳の左半球と言語発達の関連は、成人に関しては随分前から指摘されている事実です。
しかし、意外なことに就学前の幼児についての実証研究は今回のこの研究が世界初とのこと。
というのも、脳の活動を測定するMEGなどの装置では一定時間じっとしていなければ正確なデータが導きだせないため、長時間じっとしていられない幼児に対して利用することがこれまで難しかったからだそうです。
今回開発された幼児用MEGでは、子どもの好きなDVDを見れるなどの工夫をし、子どもが装置の中でじっとしていられるようにしてあります。この装置を使うと、わずか5分で安全に脳の活動を測定することができるそうです。
この研究は、幼児における左脳と言語と関連を明らかにしたという実験結果以上に、この幼児の脳活動を測定するためのMEGの開発が評価されているようですね。例えば、子ども脳障害の研究や、発達障害の早期診断などへの応用に期待が寄せられています。
こういった研究を見ていると、本当に心理学(および心理学関連領域)の研究というのは、テクノロジーの進歩の恩恵を受けて進歩していることを実感します。
今後、乳幼児の脳研究も急速に進歩しそうですね。こういった研究の成果が子どもたちのQOLに役立つことを期待したいです(^^)
posted by 山崎 at 00:38| Comment(0)
| 心理学の研究
2011年08月16日
母親の主観的幸福感と子どもの適応性は関連する
親子関係(特に母子関係)と子どもの不適応や性格特性との関連は、研究計画書のテーマとして非常に人気の高いものです。
以下に紹介する研究は2009年のものですが、親子関係について研究したい人はぜひ参考にしてください。できれば、リンク先で元論文(英語)も読んでください。
Maternal Life Satisfaction and Child Outcomes: Are They Related?
この研究はドイツで行われたもので、ドイツの社会経済研究パネル(SOEP)のデータを使って、母親の主観的満足感(subjective well-being)と、2-3歳児のときのスキルの発達レベルおよび5-6歳児のときの社会-情動的行動(行為上の問題や多動傾向、向社会的行動など)との関連を調べました。
この結果、母親の主観的満足感が高いほど、2-3歳児の時の言語スキルは高くなる一方、5-6歳児の時の社会-情動的問題は低くなるという関連が見いだされました。この関連は子どもが男のときにより顕著にみられるそうです。
特筆すべきは、これらの結果は母親のパーソナリティや認知スキルを統制した条件でも認められたとのことです。
この研究結果を見ると、母子関係の研究に関する様々なヒントが隠れていますので、ぜひ関心のある人は元論文をあたってみてください。
以下に紹介する研究は2009年のものですが、親子関係について研究したい人はぜひ参考にしてください。できれば、リンク先で元論文(英語)も読んでください。
Maternal Life Satisfaction and Child Outcomes: Are They Related?
この研究はドイツで行われたもので、ドイツの社会経済研究パネル(SOEP)のデータを使って、母親の主観的満足感(subjective well-being)と、2-3歳児のときのスキルの発達レベルおよび5-6歳児のときの社会-情動的行動(行為上の問題や多動傾向、向社会的行動など)との関連を調べました。
この結果、母親の主観的満足感が高いほど、2-3歳児の時の言語スキルは高くなる一方、5-6歳児の時の社会-情動的問題は低くなるという関連が見いだされました。この関連は子どもが男のときにより顕著にみられるそうです。
特筆すべきは、これらの結果は母親のパーソナリティや認知スキルを統制した条件でも認められたとのことです。
この研究結果を見ると、母子関係の研究に関する様々なヒントが隠れていますので、ぜひ関心のある人は元論文をあたってみてください。
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